SOLAR FEED-IN TARIFF GUIDE
「売電価格って、もう10円台なんでしょ? 今から太陽光つけても遅いんじゃ……」
福岡市南区に住む山本さん(40代・4人家族)が、見積もり相談で開口一番そう切り出した。2012年の42円を知っている人ほど、15円という数字に「今さら感」を覚えるのは自然なことだ。
2012年
42円
FIT開始時
2026年(前半4年)
24円
初期投資支援スキーム
設置費用は半額以下。売電価格だけで判断すると損をする。 2025年10月〜の新制度で前半4年間は24円/kWhに引き上げ
この記事では、2012年からの売電価格推移を一覧で掲載したうえで、2026年の新制度の中身、今後の見通し、卒FIT後の立ち回り方まで、数字と事例でまるごと解説する。
情報基準日:2026年2月|出典:資源エネルギー庁「買取価格・期間等」
SECTION 01
売電価格の推移一覧【2012〜2026年度】
まずは全体像を掴もう。42円から14.6円へ。14年間で約65%下落している。ただし設置費用も同じくらい下がっている。ここが大事なポイントだ。
住宅用(10kW未満)の推移
以下は資源エネルギー庁が公表しているFIT買取価格だ(出典:資源エネルギー庁)。
住宅用 FIT売電価格の推移(円/kWh)
※2026年度は前半4年間24円、後半6年間8.3円。10年平均14.58円。2015〜2018年は全国一律価格で表示。買取期間は全年度10年間。
| 年度 | 売電価格(円/kWh) | 買取期間 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 2012 | 42 | 10年 | FIT制度開始 |
| 2013 | 38 | 10年 | |
| 2014 | 37 | 10年 | |
| 2015 | 33(35) | 10年 | 出力制御対応で差 |
| 2016 | 31(33) | 10年 | 出力制御対応で差 |
| 2017 | 28(30) | 10年 | 出力制御対応で差 |
| 2018 | 26(28) | 10年 | 出力制御対応で差 |
| 2019 | 24(26) | 10年 | 卒FIT開始年 |
| 2020 | 21 | 10年 | 全国一律に統一 |
| 2021 | 19 | 10年 | |
| 2022 | 17 | 10年 | FIP制度開始(50kW以上) |
| 2023 | 16 | 10年 | |
| 2024 | 16 | 10年 | 前年と同額 |
| 2025上期 | 15 | 10年 | |
| 2025下期〜2026 | 24→8.3 | 10年 | 初期投資支援スキーム |
産業用(10kW以上50kW未満)
産業用も下落傾向だが、2026年度からは「屋根設置」と「地上設置」で分かれている。屋根設置なら最初の5年間が19円/kWh、6〜20年目は8.3円/kWh。工場や倉庫の屋根を持つ法人にとっては、かなり追い風だ。
SECTION 02
FIT制度のしくみをやさしく解説
「制度って言われると難しそう……」と思った方、安心してほしい。要するに「太陽光で作った電気を、国が決めた価格で電力会社が買い取る約束」のこと。住宅用なら10年間、その価格は変わらない。
FIT(固定価格買取制度)の基本
FITとは「Feed-in Tariff」の略。2012年7月に始まった。目的は再生可能エネルギーの普及だ。当時のパネルは高価で、売電の仕組みがなければ「つけても元が取れない」状態だった。そこで国が高めの買取価格を保証して、設置のハードルを下げた。
財源は電気代に含まれる「再エネ賦課金」。日本中の電気利用者全員で負担している。だから国は「普及が進んだ分、売電価格を下げて負担を減らす」方針をとってきた。
住宅用と産業用の違い
住宅用(10kW未満)
産業用(10kW以上50kW未満)
FIP制度って何?
2022年から始まったFIP(Feed-in Premium)は、市場価格にプレミアムを加えた価格で売電する仕組み。50kW以上が主な対象で、住宅用には基本的に関係ない。ただ、将来的にはFIT→FIPへの移行が進むと見られている。
経験から
「”FIT制度ってまだあるの?”と聞かれることがけっこうあります。答えはイエス。住宅用は2026年以降も続いています。ただし形は変わった。前半が高くて後半が低い2段階方式になった、というのが正確な理解です」
実例 ─ 福岡市南区 山本さん(40代・4人家族・築12年)
2025年10月に設置 → 初年度の売電収入が約2.4倍に
従来制度なら
15円/kWh
初期支援スキーム
24円/kWh
年間余剰売電量3,500kWhの場合、最初の4年間で約12.6万円の差。5kW設置で補助金活用後の実質負担60万円台。※実績に基づくイメージです
新制度の売電価格、うちはいくらになる?
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SECTION 03
2026年の新制度「初期投資支援スキーム」とは
ここが本記事の核心だ。2025年2月の閣議決定で、太陽光のFITに「初期投資支援スキーム」が導入された。適用は2025年10月1日から。売電価格は下がるどころか、最初の4年間はむしろ上がっている。
2段階価格の仕組み
前半に高い単価を集中させ、初期投資の回収を早める設計だ。10年間のトータルで見ると国民負担は変わらない、という建て付け。
従来制度(2025年上期まで)
新制度(2025年10月〜)
10年間の平均売電価格は、従来15円、新制度14.58円。差はわずか0.42円。トータル収入はほぼ同じなのに、お金が「いつ入るか」が全然違う。「早くもらえるお金」のほうが価値が高い。これは太陽光でも同じだ。
なぜ今、単価を上げたのか?
第7次エネルギー基本計画で、再エネを電源構成の4〜5割に引き上げる方針が掲げられた。太陽光は23〜29%が目標で、現在の2〜3倍が必要。「早く元が取れる」仕組みで屋根にもっとパネルを載せてもらう——それが初期投資支援スキームの狙いだ。
5年目以降、どうすればいい?
正直に言おう。5年目からの8.3円/kWhで売電を続けても、電気代の節約にはなりにくい。家庭の電気料金は30〜40円/kWh程度だから、売るより使ったほうが圧倒的にお得だ。
つまりこの制度は「最初の4年で稼ぎ、5年目からは自家消費に切り替える」という設計。蓄電池やエコキュートとの併用を最初から視野に入れておこう。
アドバイス
「新制度を”24円に上がった!”と喜ぶだけだと片手落ちです。大事なのは5年目以降の出口戦略。蓄電池を入れて自家消費率を上げるか、新電力の高単価買取プランを探すか。その見通しまで含めて、設置前にシミュレーションすることをおすすめします」
SECTION 04
売電価格が下がっても太陽光がお得な3つの理由
「でもやっぱり、42円と比べたら見劣りするよね」——その気持ちはわかる。でも売電価格だけで損得を判断するのは、年収だけで生活水準を判断するようなもの。「支出」も見なきゃ意味がない。
理由①:設置費用が半額以下
2012年の設置費用は1kWあたり約46万円。2025年は約23万円。売電価格が65%下がっても、設置費用が55%下がっていれば、投資回収の計算はそう大きくは変わらない。
理由②:電気代高騰で「自家消費」の価値が爆増
2012年と今で決定的に違うのが電気料金だ。燃料費高騰や再エネ賦課金の影響で、家庭の電気代は1kWhあたり30〜40円台に上昇。「15円で売る」より「35円分の電気代を浮かす」ほうがはるかに得になった。
理由③:補助金が手厚い
国・県・市の補助金を組み合わせれば、実質負担はさらに下がる。設置費用、売電収入、補助金——この3つを合わせて計算すると、2026年は過去10年間で最も「お得」なタイミングかもしれない。
補助金3重取りとは
国の補助金、県の補助金、市の補助金。この3つは併用できるケースがほとんど。うまく組み合わせれば、最大100万円以上の補助金になることも。「1つだけ」で申請している人が、実はかなり多いんです。
実例 ─ 北九州市八幡西区 佐藤さん(50代・3人家族・築18年)
補助金3重取り+新FITで実質負担30万円台に
設置見積もり
115万円
補助金控除後
38万円
5kWシステム+国・県・市の補助金活用。新FITの最初4年間で約33.6万円の売電収入見込み → 実質1年で回収ペース。※実績に基づくイメージです
BCソーラーとは
変換効率26.5%。一般的なパネルの約半分の重さ。裏面電極配置で、光の受光面積を最大化。つまり「軽くて、よく発電する」パネルです。屋根への負担が心配な方にこそ、知ってほしい選択肢です。
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SECTION 05
卒FIT後の選択肢と売電先の選び方
FITの10年間が終わったらどうなるか。答えを先に言うと、売電は続けられる。ただし買取価格はガクンと下がる。大手電力会社の卒FIT買取価格は7〜9円/kWh程度。42円で売っていた人にとっては80%以上の減収だから、衝撃は大きい。
だけど、ここで焦って何もしない人と、きちんと比較検討する人とで、年間数万円の差がつく。それが卒FITの現実だ。
卒FIT後の3つの選択肢
-
1
新電力に乗り換えて高値売電
大手の7〜9円に対し、新電力なら10〜14円台で買い取るプランがある。東京電力エリアではスマートFITが最大14.6円、エネまかせの市場連動型は平均13.88円(2026年1月時点)。九州エリアでも10〜11円台の選択肢あり。出典:エネチェンジ
-
2
蓄電池で自家消費に切り替え
売電価格10円未満の時代に、30〜40円の電気を買うのはもったいない。蓄電池で昼の余剰電力を夜に使えば、自家消費率は60〜80%まで上がる。卒FIT世帯の蓄電池導入は年々加速中。補助金が使えるケースも多い。
-
3
売電継続+蓄電池のハイブリッド運用
昼の余剰電力は蓄電池に充電、それでも余った分は新電力に売る。「全部売る」でも「全部使う」でもない、いいとこ取りの戦略。この方式を選ぶ世帯が実際に増えている。
卒FIT売電先の選び方
チェックポイント
セカンドオピニオンとは
他社で「設置できない」と言われた屋根でも、パネルの種類や工法を変えれば対応できるケースがあります。1社の判断だけで諦めるのは、もったいない。セカンドオピニオンは無料です。
SECTION 06
2027年以降の売電価格はどうなる?
将来の売電価格は確定していない。でも制度設計の方向性は見えている。
2027年度の見通し
初期投資支援スキームは2027年度も継続される可能性が高い。ただし前半の高単価部分がやや引き下げられる見込みだ。住宅用で前半22〜23円/kWh、後半8.0〜8.3円/kWh程度。2026年度より少し条件は厳しくなるが、投資メリットはまだ十分に残る水準と見られている。
2028年以降 ─「自立した電源」へ
経済産業省は「2028年に市場価格並みを達成する」目標を掲げている。FITによる上乗せがほぼなくなる世界が視野に入っている。
これは悲観的な話ではない。むしろ逆だ。FITが不要になるということは、「太陽光は補助なしでも採算が合う」時代が来るということ。売電ではなく自家消費が主軸になり、蓄電池やEVとの組み合わせで「電気を買わない暮らし」が現実味を帯びてくる。
だからこそ「今」が狙い目
前半24円が保証される2026年度のFITは、おそらく過去最後の「高単価前半」。2027年以降は下がる一方。設置費用は今が底値圏。FITの恩恵が最も大きいのは間違いなく今だ。
FAQ
太陽光発電の売電価格に関するよくある質問
SUMMARY
まとめ:売電価格の「数字だけ」で判断しない
この記事のポイント
- 住宅用FIT売電価格は2012年の42円から2026年度は平均14.58円に低下
- 2025年10月〜「初期投資支援スキーム」で前半4年間は24円に引き上げ
- 設置費用も半額以下(1kWあたり約23万円)で、回収期間は大きく変わらない
- 電気代高騰(30〜40円)で「自家消費」の経済メリットが過去最大に
- 卒FIT後は新電力乗り換え(10〜14円台)+蓄電池が最適解
- 2027年以降は条件が厳しくなる見通し。2026年度が最も恵まれたタイミング
冒頭で紹介した山本さんの「もう遅いんじゃ」という疑問。この記事を読んだあなたなら、もうその答えを持っているはずだ。売電単価が下がった分だけ設置費用も下がり、電気代の高騰で自家消費の価値が急騰している。しかも2026年度は新制度で前半24円の恩恵がある。
「売電価格が下がった=太陽光は損」。この思い込みが、本当の敵だ。数字の裏側にある構造を理解した今のあなたは、もうその思い込みには振り回されない。
監修者コメント
太陽光発電の売電価格だけを見ていると、「もう旨みがない」と思いがちです。でも現場の感覚は真逆。設置費用が下がり、電気代が上がり、新制度で前半の収入が手厚くなった今が、実は最もバランスのいいタイミング。特に補助金の3重取りを知らない方がまだまだ多い。国・県・市を全部使えば、実質負担は驚くほど下がります。まずはシミュレーションで確認してみてください。
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※本記事の情報は2026年2月時点のものです。FIT制度の買取価格は年度ごとに改定されます。最新情報は資源エネルギー庁の公式ページをご確認ください。記事内の事例は実績に基づくイメージであり、個別の結果を保証するものではありません。
現場から
「42円だった時代を知っている人ほど”もう終わった”と言いがちです。でも正直、当時は1kWあたりの設置費用が50万円を超えていました。今は20万円台前半。売電価格と設置費用はセットで考えないと、正しい判断はできません」