SOLAR SIMULATION GUIDE
太陽光発電の見積もりに「年間予測発電量」「電気代削減額」「売電収入」などの数字が並んでいても、 その数字だけを見て良し悪しを判断するのは難しいものです。
見るべきなのは、結果より「何を前提に計算したか」です
年間発電量は、設置地域、太陽光パネルの容量、屋根の向き・傾斜、日射量、影、機器の特性などによって変わります。 さらに収支シミュレーションでは、自家消費量、売電量、FIT価格、買電単価、維持費などの前提が加わります。
同じ住宅でも前提条件が違えば結果は変わるため、「年間○kWh」「○年で回収」という結果だけでなく、計算に使った条件を確認することが大切です。
太陽光発電の年間発電電力量を推定する方法としては、JIS C 8907:2005が現在も有効な規格として公開されています。 また、NEDOは国内の日射量を確認できるWEB版日射量データベース(MONSOLA-20/METPV-20)を公開しています。
この記事では、公的機関などの公開情報をもとに、 業者から太陽光発電シミュレーションを受け取ったときに、どこを確認すればよいかを整理します。
情報確認日:2026年8月12日
SECTION 01
「発電量」と「お金」のシミュレーションは分けて見る
太陽光発電の資料では、年間発電量と経済メリットが同じ表にまとめられていることがあります。 確認するときは、まず2つに分けると分かりやすくなります。
発電量のシミュレーション
設置した太陽光発電が、年間・月間でどのくらい発電するかを予測するものです。 設置容量、日射量、方位、傾斜、影などの条件が関係します。
収支のシミュレーション
予測発電量をもとに、自家消費による電気代削減、売電収入、初期費用などを組み合わせて経済性を試算するものです。
年間発電量の予測が同じでも、自家消費量や電気料金、売電価格の置き方が違えば、 「年間メリット」や「回収年数」は変わります。
まず、なぜその年間発電量になったのかを確認します。そのあとで、自家消費・売電・費用の計算を見ると整理しやすくなります。
SECTION 02
年間予測発電量を見るときに確認したい5項目
JIS C 8907:2005は、太陽光発電システムの年間システム発電電力量を推定する方法を定めた規格です。 ただし、シミュレーション結果そのものが将来の発電量を保証するものではありません。
見積もりを確認するときは、細かな計算式を覚えるより、次の入力条件が自宅の状況に合っているかを見てください。
設置容量は何kWで計算しているか
見積書の太陽光パネルの枚数・型番・1枚あたり出力と、シミュレーションに使われているシステム容量が一致しているか確認します。
どの地点の日射量データを使っているか
NEDOのWEB版日射量データベースでは、日本国内の地点ごとの日射量を確認できます。 「福岡県」など広い地域名だけでなく、どの観測地点・データを使ったのか確認すると比較しやすくなります。
屋根の向き・傾斜が実際の住宅と合っているか
NEDOの日射量データベースでも、方位角・傾斜角を指定して日射量を確認できます。 南向きだけを前提にした計算になっていないか、東西面を含む場合はどう反映しているかを確認します。
影や障害物をどのように扱っているか
近隣建物、樹木、電柱、屋根上の設備などによる影は、住宅ごとに条件が違います。 現地調査前の簡易シミュレーションでは十分に反映できていない場合もあるため、影をどう計算したかを聞いておきます。
発電ロスをどのような前提で計算したか
太陽電池の温度、パワーコンディショナ、配線など、発電電力量には複数の要素が関係します。 「損失係数は何%なら正解」と一つの数字で判定するのではなく、採用する製品・設置条件でどのように補正しているかを確認します。
NEDOの日射量データは「1つの数字」ではありません
NEDOのWEB版日射量データベースでは、平均年に加えて、多照年・寡照年の表示も選択できます。 将来の天候を正確に予測するものではありませんが、日射量には年による変動があることを理解する材料になります。
SECTION 03
「何年で元が取れる?」は発電量とは別に確認する
収支シミュレーションでは、年間発電量に加えて、家庭の電気の使い方や売電条件が関係します。 発電量が同じ住宅でも、昼間にどれだけ電気を使うかで自家消費量と売電量は変わります。
| 確認項目 | 見るところ | 注意したいこと |
|---|---|---|
| 自家消費量 | 発電した電気のうち自宅で使う量 | 実際の昼間の使用状況と大きく離れていないか |
| 売電量 | 発電量から自家消費した後に余る量 | 自家消費した電気を同時に売電扱いしていないか |
| 買電単価 | 自家消費1kWhの価値を計算する前提 | 現在の電気料金明細や契約プランと合っているか |
| 売電単価 | FITなどで売電するときの単価 | 対象年度・年数が正しいか |
| 設置費用 | 設備・工事を含めた初期費用 | 補助金差引前と差引後を混同しない |
| 維持管理費 | 点検、修理、機器交換などの想定 | 費用・時期を固定値で決めず、何を見込んでいるか確認 |
| 長期の発電量 | 10年・20年などの収支で使う発電量 | 全期間を初年度と同じ発電量にしているか、変化をどう置いているか確認 |
将来の電気料金を上昇前提にする場合は、上昇しなかった場合の結果も見せてもらうと判断しやすくなります。
他社からシミュレーションを受け取ったものの、数字の根拠が分からない方へ
年間発電量・自家消費・売電の前提を一緒に確認できます
見積書やシミュレーション資料があれば、設置容量、計算条件、売電単価、補助制度など、確認したい項目を整理します。 住宅条件によって発電量や利用できる制度は変わるため、個別条件を確認したうえでご案内します。
シミュレーション・見積もりについて相談する資料を確認してから、設置するかどうかを判断できます。
SECTION 04
2026年度の住宅用FITは「24円 → 8.3円」で計算する
2026年度に新たに対象となる住宅用太陽光発電(10kW未満)は、初期投資支援スキームが適用されます。 経済産業省が2026年3月19日に公表した内容では、買取価格は次のとおりです。
| 期間 | 住宅用太陽光(10kW未満) |
|---|---|
| 1〜4年目 | 24円/kWh |
| 5〜10年目 | 8.3円/kWh |
シミュレーションを見るときは、10年間ずっと同じ売電単価で計算していないか確認してください。 また、すでに太陽光発電を設置している住宅では、現在の2026年度価格ではなく、設備ごとの買取期間・契約条件を確認する必要があります。
制度は年度によって変わるため、長期収支では「何年目に、何円で売る前提か」を確認してください。
SECTION 05
シミュレーションを受け取ったら聞きたい7つの質問
計算式を自分ですべて再現しなくても、次の質問に答えてもらえば前提条件をかなり確認できます。
- 「年間発電量は、何kWのシステムで計算していますか?」
- 「日射量はどの地点・データを使っていますか?」
- 「屋根の方位・傾斜・影はどのように反映していますか?」
- 「発電ロスは、どの項目をどのように見込んでいますか?」
- 「自家消費量と売電量は、何を根拠に分けていますか?」
- 「10年間の売電価格は、年度ごとにどう設定していますか?」
- 「回収年数には、どの費用と将来前提を含めていますか?」
答えが違うからといって、すぐに間違いとは限りません。 大切なのは、数字の根拠を説明でき、その条件が自宅の状況と合っているかを確認できることです。
見積書全体も合わせて確認する
太陽光発電の見積もりチェックリスト|確認したい項目FAQ
太陽光発電シミュレーションについてよくある質問
シミュレーション通りの発電量になりますか?
将来の発電量を保証するものではありません。日射量や天候は年によって変わり、影や設備状態なども影響します。結果の数字だけでなく、どの条件を使って予測したかを確認してください。
NEDOの日射量データは現在も使えますか?
はい。NEDOは2026年4月30日更新のページで、WEB版日本国内日射量データベース(MONSOLA-20/METPV-20)を公開しています。地点、方位角、傾斜角などを指定して確認できます。
JIS C 8907は古い規格ではありませんか?
JIS C 8907:2005は2005年制定ですが、日本規格協会の公開情報では現在も「有効」とされています。2022年10月20日に内容が確認されています。
損失係数は何%なら正しいですか?
住宅用太陽光すべてに共通する一つの割合で判断しないほうが安全です。使用する機器、温度、配線、影など複数の条件が関係するため、「何%か」だけでなく、何を根拠にその補正値を使ったかを確認してください。
業者によって年間発電量が違うのはおかしいですか?
違うこと自体が直ちに間違いとは限りません。パネル容量、日射データ、影、損失の扱いなど前提が違えば結果も変わります。まず各社の入力条件を並べて比較してください。
2026年度の住宅用FITはいくらですか?
2026年度の住宅用太陽光(10kW未満)の新規対象では、1〜4年目が24円/kWh、5〜10年目が8.3円/kWhです。既設設備は設備ごとの買取期間・契約条件を確認してください。
自分で発電量を計算したほうがいいですか?
細かな計算式まで再現する必要はありません。まず設置容量、日射量の地点、屋根の方位・傾斜、影、損失の前提が明示されているかを確認すると、シミュレーションを比較しやすくなります。
SUMMARY
まとめ|シミュレーションは「結果」より「前提条件」を確認する
太陽光発電のシミュレーションは、設置前に発電量や収支を考えるための大切な資料です。 ただし、表示された年間発電量や回収年数だけを見ても、その数字が自宅に合っているかは分かりません。
- 発電量の予測と収支の予測を分けて見る
- 設置容量と見積書のパネル構成が一致しているか確認する
- 日射量の地点、屋根の向き・傾斜、影の扱いを見る
- 損失を一律の割合で判断せず、計算根拠を確認する
- 自家消費量と売電量が重複していないか確認する
- 2026年度の住宅用FITは1〜4年目24円、5〜10年目8.3円で確認する
- 回収年数に使う電気料金や維持費などの前提も確認する
すでにシミュレーションを持っている場合は、年間発電量の数字より先に「何を使って計算したか」を確認してみてください。 根拠が分からない項目があれば、業者に質問したうえで比較すると判断しやすくなります。
「このシミュレーション、数字が良すぎない?」と感じたら
見積書と一緒に、計算の前提を整理します
メーカー・型番、設置容量、発電シミュレーション、電気使用量などから、確認しておきたい項目を整理します。 補助制度は地域・設備・申請時期によって異なるため、必要な場合は現在の公表情報も確認します。
シミュレーション・見積もりを相談する内容を確認してから、導入するかどうかを判断できます。
確認した主な公開情報
- NEDO|WEB版日本国内日射量データベース(MONSOLA-20/METPV-20)
- 日本規格協会|JIS C 8907:2005 太陽光発電システムの発電電力量推定方法
- 経済産業省|2026年度以降のFIT・FIP買取価格等
日射量データ、FIT制度、電気料金、設備仕様などは変更される場合があります。実際の設置・契約時は、対象設備と契約年度に応じた最新情報をご確認ください。
