情報確認日:2026年8月14日
太陽光発電システムでも電磁界は発生します。ただし、公表されている測定では、太陽光パネル・パワーコンディショナーの磁界は、対応するICNIRPのガイドライン値より低い値でした。
WHOは、低レベルの電磁界への曝露について、現在の科学的証拠では健康への悪影響は確認されていないとしています。一方で、長期的な低レベル曝露を含め、研究が続いている分野もあります。
そのため、「太陽光発電の電磁波は絶対にゼロ」「健康への影響は絶対に起こらない」と断定するのではなく、どこからどの種類の電磁界が発生し、どのような条件で測定されているのかを確認することが大切です。
- 太陽光パネル側にも直流磁界(静磁界)がある
- パワコン側では50/60Hzの交流磁界が発生する
- 公表されている測定値には測定距離・設備規模などの条件がある
- 静磁界と交流磁界では対応するガイドライン値が違う
- WHOは低レベル電磁界による健康影響を現在の証拠では確認していない
- ペースメーカーなどの医療機器を使用している場合は個別確認が必要
なお、一般には「電磁波」という言葉で検索されますが、公的・専門機関の資料では「電磁界」「磁界」という表現も使われています。この記事では必要に応じて使い分けます。
太陽光発電ではどこから電磁界が発生する?
太陽光パネルで発電される電気は直流です。その後、パワーコンディショナー(パワコン)が直流を家庭で使用できる50Hzまたは60Hzの交流へ変換します。
電磁界情報センターでは、太陽光発電システムから発生する磁界を大きく次の2種類に分けています。
| 主な場所 | 電気の種類 | 磁界の種類 | 周波数 |
|---|---|---|---|
| 太陽光パネルからパワコンまで | 直流 | 直流磁界(静磁界) | 0Hz |
| パワコンから交流側 | 交流 | 交流磁界(低周波磁界) | 50Hz・60Hz |
パワコンでは交流変換に伴い、高調波による磁界もわずかに発生します。
直流電流が流れる部分には静磁界が生じます。パネル側とパワコン側では磁界の種類・周波数が異なるため、同じ基準値で単純比較しないことが大切です。
太陽光パネル・パワコンの磁界はどのくらい?
電磁界情報センターは、太陽光発電システムについて実際の磁界測定結果を公開しています。
この測定は出力数十kWの事業用太陽光発電システムを対象としたものです。住宅用太陽光の全メーカー・全機種に共通する数値ではありません。
| 測定対象 | 磁界の種類 | 0.2m地点の最大実測値 | 対応するICNIRPガイドライン値 |
|---|---|---|---|
| 太陽光パネル | 直流磁界 (静磁界・0Hz) | 8.33μT | 400mT (400,000μT) |
| パワーコンディショナー | 交流磁界 (50/60Hz) | 7.49μT | 200μT |
μT(マイクロテスラ)は磁界の強さを表す単位です。
この測定では、パネル・パワコンともに最大実測値は、それぞれ対応するICNIRPガイドライン値より低い値でした。
8.33μTは0Hzの静磁界、7.49μTは50/60Hzの交流磁界です。周波数が違い、対応するガイドライン値も異なります。
また、パネルの出力は日射量によって変化します。同センターでは、ある測定例について定格最大出力時の静磁界を約31.0μTと推定しています。これも特定の測定条件から算出された値であり、住宅用パネルの共通値ではありません。
WHOは低レベルの電磁界と健康影響をどう見ている?
WHOは、現在の科学的証拠では、低レベルの電磁界への曝露による健康への悪影響は確認されていないとしています。
一方、非常に高いレベルへの短時間の曝露では、生物学的作用や健康への影響が生じることが知られており、国際的な曝露ガイドラインはこうした確立された作用をもとに設定されています。
測定値がガイドライン値を下回っていることは、確立された健康影響から公衆を保護するための基準との比較では重要な情報です。
ただし、「ガイドライン値の○分の1だから、将来を含めてあらゆる健康リスクが完全にゼロ」と証明するものではありません。
WHOは、低レベルの電磁界について現在の証拠から健康影響は確認されていないとする一方、生物学的影響について知見の空白があり、研究が必要な分野が残っているとも説明しています。
太陽光の低周波電磁界はX線などの電離放射線とは性質が違う
「電磁波」という言葉から、X線やガンマ線のような放射線を連想する方もいますが、電力設備で使われる50Hz・60Hzの低周波電磁界とは性質が異なります。
経済産業省では、X線やガンマ線などは原子から電子を引き離す電離作用を持つ「電離放射線」であるのに対し、電力設備から発生する超低周波電磁界にはそのような電離作用はなく、「非電離放射線」として区別しています。
X線・ガンマ線など:電離作用を持つ
50/60Hzの低周波電磁界:X線などのような電離作用を持たない
そのため、「電磁波」という一つの言葉だけで、異なる周波数・性質のものを同じ危険性として扱わないことが大切です。
長期的な低レベル曝露については研究が続いている
低周波磁界の長期曝露については、小児白血病との関連を含めて研究が続けられてきました。
WHOによると、IARC(国際がん研究機関)は2002年、低周波磁界を「ヒトに対して発がん性があるかもしれない」と分類しました。これは主に、住宅での長期的な平均磁界曝露と小児白血病との疫学研究をもとにしたものです。
一方、WHOは研究方法上の問題や、低レベル磁界が発がんに関係する確立した生物学的メカニズムがないことなどから、因果関係と判断するには証拠が十分ではないとしています。
測定時間・距離・周波数・曝露期間など条件が異なるためです。
こうした背景もあるため、このページでは「絶対に健康影響はない」と断定せず、現在分かっている範囲を分けて説明しています。
パワコンから距離を取ると磁界は小さくなる?
電磁界情報センターの太陽光発電システム測定では、太陽光パネル・パワコンともに、距離が離れるほど磁界の強さが小さくなることが確認されています。
経済産業省も、50Hz・60Hzの電力設備から発生する電磁界は距離とともに弱くなると説明しています。
ただし、「1m離れればゼロ」「2mなら安全」という全国共通の距離基準はありません。
実際のパワコン設置場所は、採用する機種が屋内用か屋外用か、直射日光・雨・温度・湿度、メンテナンススペースなどメーカーの施工条件を優先して決めます。
電磁界が気になる場合は、契約前にパワコンの型番と設置予定位置を確認し、長時間過ごす場所との位置関係について施工会社・メーカーへ相談しておく方法があります。
ペースメーカー・ICDなどを使用している場合は個別確認を
植込み型心臓ペースメーカーや植込み型除細動器(ICD)などを使用している方は、一般向けの電磁界ガイドライン値だけで自己判断しないでください。
PMDAでは、植込み型心臓ペースメーカー等について、外部から発生する電磁波の影響によって不具合が起きる可能性を否定できないとして、医療機器メーカーによる確認や情報提供を求めています。
設置前に確認しておきたいこと
- 使用している医療機器の取扱説明書・患者向け注意事項
- 担当医への確認
- 医療機器メーカーへの確認
- 採用予定のパワコンメーカー・型番
- パワコンの設置予定場所
医療機器とパワコンの機種・仕様によって条件が異なるため、個別の製品情報を確認してください。
「電磁波過敏症」と呼ばれる症状についてWHOはどう説明している?
電磁界に関連して、頭痛、疲労、めまい、皮膚症状などを訴える方がおり、「電磁波過敏症(EHS)」と呼ばれることがあります。
WHOは、こうした症状は実在し、人によっては生活へ大きな影響を与えることがあるとしています。
一方、WHOは、EHSに明確な診断基準はなく、症状と電磁界曝露を直接結びつける科学的根拠は確認されていないとしています。また、単一の医学的疾患を示しているかどうかも明確ではないとしています。
症状がある場合は、「電磁波だから」と自己判断するのではなく、症状そのものについて医療機関へ相談し、必要な評価を受けることが大切です。
出典:WHO「Electromagnetic hypersensitivity」
妊娠中・子どもがいる家庭ではどう考える?
WHOでは、家庭や職場などで通常みられるレベルの電磁界について、妊娠への影響を調べた研究が行われてきたことを紹介しています。
現在までの証拠全体では、一般的な環境レベルの電磁界曝露によって、流産、先天異常、低出生体重などの妊娠転帰が増えることは示されていません。
ただし、これは「太陽光パワコンが妊婦・乳幼児に絶対に影響しない」という個別の医学的保証ではありません。
妊娠中の方、お子さまの健康について特別な不安がある場合は、設備の一般的な情報とは別に医師へ相談してください。
太陽光発電と電磁波でよくある質問
まとめ|太陽光の電磁界は「ゼロか危険か」の二択で考えない
太陽光発電システムでは電磁界が発生します。ただし、パネル側とパワコン側では磁界の種類が異なり、対応するガイドライン値も違います。
- 太陽光パネルからパワコンまでの直流部分には静磁界がある
- パワコンの交流側には50/60Hzの交流磁界がある
- 事業用システムの測定では0.2m地点でパネル8.33μT、パワコン7.49μTが最大実測値だった
- この2つは周波数が異なるため単純比較しない
- 測定値はそれぞれ対応するICNIRPガイドライン値より低かった
- WHOは低レベル電磁界による健康影響を現在の証拠では確認していない
- 長期的な低レベル曝露については研究が続いている
- 「1mならゼロ」などの一律の安全距離は設定しない
- 植込み型医療機器を使用している場合は個別の機器条件を確認する
太陽光発電の電磁界について、公表されている情報から「絶対に危険」と判断する根拠は確認できません。一方、「絶対に何のリスクもない」と言い切る必要もありません。
設備を検討するときは、測定条件と科学的な見解を確認したうえで、特に気になる場合はパワコンの型番・設置位置を契約前に確認してください。
確認した主な公的・専門機関の情報
- 電磁界情報センター|太陽光発電システムから発生する電磁界
- 電磁界情報センター|その他の発生源・太陽光発電
- WHO|Electromagnetic fields
- WHO|Exposure to extremely low frequency fields
- WHO|Electromagnetic hypersensitivity
- 経済産業省|電磁界の性質・作用
- 経済産業省|電磁界に対する規制
- PMDA|植込み型心臓ペースメーカ等が受ける電磁波影響
情報確認・改訂:2026年8月14日
※本記事は太陽光発電と電磁界に関する一般的な情報を整理したもので、個別の診断・治療・医療機器の使用判断を行うものではありません。健康状態や植込み型医療機器について不安がある場合は、担当医や医療機器メーカーへご確認ください。
