VOLTAGE RISE PROBLEM
「あれ、今月の売電量、やけに少ないな——」。福岡市在住のTさん(40代・4人家族)は、発電モニターを見て首をかしげた。快晴が続いた5月。パネルは問題なく動いている。でも、数字が合わない。原因を調べて出てきた表示が「電圧上昇抑制」。聞いたこともない言葉だった。
これ、実はかなり多い相談なんです。太陽光発電の電圧上昇問題——発電しているのに売電できないという、地味だけど確実にお金を失う現象。パネルの故障でもなければ、パワコンの不具合でもない。電気の「物理的な性質」が原因で、せっかく作った電気が行き場を失っている状態です。
この記事では、電圧上昇で売電量が減る仕組みから、電力会社への具体的な相談方法、パワコンの力率設定、蓄電池を使った根本対策まで、17年の現場経験をもとにお伝えします。「うちも当てはまるかも」と思った方、最後まで読む価値はあります。
SECTION 01
電圧上昇問題の結論:パワコンが売電を「止めている」
「難しい電気の話でしょ?」と身構えた方、ちょっと待ってください。原理はシンプルです。水に置き換えると一発でわかります。
蛇口(パワコン)からホース(電線)に水を流したい。でも、ホースの中がすでに水でパンパンだったら? 押し込めないですよね。これが電圧上昇問題の正体です。
電気は電圧の高いところから低いところに流れます。売電するには、家の電圧を電線側より高くする必要がある。この調整をやっているのがパワーコンディショナー(パワコン)です。
ところが、電気事業法で電圧の上限が決まっています。低圧の場合、接続点の電圧は95V〜107Vでなければならない(出典:電気事業法第26条・施行規則第44条)。パワコンは法律を守るために、107Vを超えそうになると自動で出力を絞る。結果、発電しているのに売電できない——これが電圧上昇抑制です。
怖いのは、この問題が「見えない損失」だという点。壊れているわけじゃないから、放っておく人が多い。でも年間で見ると、けっこうな金額になります。
実例 ─ 福岡県糸島市 Kさん(4人家族・築8年)
電圧抑制に1年間気づかず、売電収入が約15%減少
対策前の年間売電
8.5万円
対策後の年間売電
10.2万円
電力会社への相談+パワコン整定値の変更で改善。差額は年間約1.7万円。10年で17万円の差。※実績に基づくイメージです
うちの売電量、本当に適正?
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SECTION 02
なぜ電圧が上がる?電圧上昇が起きる3つの原因
「で、うちはなんで電圧が上がるの?」——ここが一番知りたいところですよね。原因は大きく3つに分かれます。
原因①:近隣の電力環境が影響しているケース
近くに大きな工場やショッピングモールがあると、電力会社はそのエリアの電圧を最初から高めに設定していることがあります。平日の昼間は工場が大量の電気を使うから、電圧が下がってバランスが取れる。問題は、その工場が昼休みに入ったとき。一気に電力消費が減って、電線内の電圧がグンと跳ね上がる。
もうひとつ。近隣に太陽光パネルを設置している家が増えると、晴れた日の昼間にみんなが一斉に売電しようとする。電線に電気が溢れて、電圧が上がる。これは蛇口が10本あるのにホースが1本しかないようなイメージです。
原因②:トランス(変圧器)からの距離が遠い
電柱の上にある「トランス」という灰色の箱、見たことありますか? あれが電圧を調整する装置です。このトランスから家までの距離が遠いほど、電気が流れにくくなって電圧の問題が起きやすい。
配電系統の末端にある家は要注意。トランスに近い家が売電すると、その分だけ電線の電圧が上がる。末端の家から見ると「もう電線がいっぱいで、自分の電気を押し込めない」という状態になりやすいんです。
原因③:宅内の配線に問題がある
意外と見落とされるのがこれ。パワコンから電力メーターまでの宅内配線が細い、あるいは長すぎると、それだけで電圧が無駄に上がります。
ひとつの目安があります。パワコンの出力端と売電メーターの電圧差が2Vを超えている場合は、配線の見直しが必要とされています(出典:SIソーラー「電圧上昇抑制対策について」)。ケーブルが余って巻いてある施工や、メーカー規定より長い距離を細いケーブルで繋いでいるケースが該当します。
| 原因 | 具体例 | 自分で対処できるか |
|---|---|---|
| 近隣の電力環境 | 近くに工場・太陽光設置宅が多い | ✕(電力会社に相談) |
| トランスとの距離 | 配電系統の末端に位置する | ✕(トランス新設は電力会社判断) |
| 宅内配線の問題 | 配線が細い・長い・施工不良 | △(業者に配線見直しを依頼) |
※横スクロールできます
近隣の電力環境
トランスとの距離
宅内配線の問題
経験談
私が担当した福岡市東区のお宅では、引込線から分電盤までの距離が約30m。これは平均の3倍以上でした。ケーブルを太いものに交換しただけで、電圧抑制の頻度が月10回以上から月1〜2回に激減。正直、配線の問題はプロでないと見抜けません。
SECTION 03
あなたの家は大丈夫?電圧抑制の確認方法
「じゃあ、うちで電圧抑制が起きてるかどうか、どうやってわかるの?」——いい質問です。確認する方法は3つあります。
方法①:パワコンの表示を確認する
ほとんどのパワコンには、電圧抑制が発生すると表示ランプやエラーコードが出る機能がついています。メーカーによって表示は違いますが、「電圧上昇抑制中」「出力抑制」「OVR」などの文字が出ていたら、ビンゴ。
最近のパワコンは履歴も残る機種が増えています。SMAのパワコンならファームウェア2.61以上で液晶画面に「電圧上昇抑制中」と表示され、イベント履歴にも記録される。オムロンやパナソニックも同様の表示機能があります。
方法②:発電モニターのグラフをチェック
晴れた日の発電グラフを見てください。正常なら、お昼前後をピークにした「きれいな山型」になるはず。電圧抑制が起きていると、ピーク付近がへこんだ「M字型」のグラフになります。晴天なのに正午前後で発電量がガクッと落ちている。それは電圧抑制のサインです。
方法③:電圧を実測する
パワコンの出力端と、売電メーター(引込線の接続箇所)の2箇所で電圧を測定します。この2箇所の電圧差が2Vを超えていたら、宅内配線に問題がある可能性が高い。ただし、これは電気工事士の資格を持つプロに依頼してください。素人が分電盤を開けるのは危険です。
セルフチェックのコツ
まずは「方法②」から試すのが手軽です。快晴の日が3日以上続いたタイミングで発電グラフを確認する。M字型が続いているなら、設置業者か電力会社に連絡しましょう。早く動いた分だけ、損失は小さくなります。
SECTION 04
電圧上昇を解消する3つの対策
原因がわかったら、次は対策。ここからが本題です。大きく分けて3つの方法があります。
対策①:電力会社に相談してトランスの電圧を調整してもらう
まず試すべきはこれ。電力会社に「電圧抑制が頻発して困っている」と伝える。証拠があると話が早い。パワコンのモニターに「電圧上昇抑制中」と表示されている写真、電柱側の電圧が表示されている画面の写真を撮っておくと、対応がスムーズになります。
電力会社が対応してくれるケースは、大きく2つ。ひとつは柱上トランスの電圧設定を下げること。もうひとつは、自宅近くにトランスを新設すること。後者は電力会社の判断になりますが、データを持って相談すれば動いてくれることも多いです。
-
1
電圧抑制の発生状況を記録する
何時頃に・どのくらいの頻度で発生しているかを記録。モニター画面のスクリーンショットがベスト。
-
2
電力会社のカスタマーセンターに連絡
「太陽光発電の電圧上昇抑制が頻発している」と伝える。担当部署に取り次いでもらう。
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3
現地調査を依頼する
電力会社が電圧を計測して、トランスの調整や配電線の対策を検討してくれます。
対策②:パワコンの整定値(力率設定)を変更する
ちょっと専門的な話になりますが、知っておくと損しません。パワコンの電圧上限値(整定値)を電力会社に許可をもらった上で変更する方法があります。
2017年3月の系統連系規程改定で、住宅用太陽光のパワコン標準力率は0.95(95%)とされました(出典:JPEA「力率一定制御についてのQ&A集」)。力率0.95で運転すると、無効電力を使って電圧上昇を抑える効果があります。
「力率を下げると発電量が落ちるんじゃ?」——正直、その通りです。力率0.95の場合、最大出力は定格の95%になる。ただし、これは「ピーク出力付近のごくわずかな時間帯だけ」の話。年間の総発電量への影響は1〜2%程度と言われていて、電圧抑制で10%以上の売電ロスが出ている状況と比べたら、圧倒的にマシ。
注意点がひとつ。パワコンの設定は個人で勝手に変えちゃダメです。必ず電力会社に相談して許可を取ってから、設置業者に依頼してください。107Vを超える設定にすると電気事業法違反になりますし、周辺の家電に影響を与えるリスクもあります。
対策③:宅内配線を太く・短くする
原因③に該当する場合の対策。パワコンから引込点までの配線ケーブルを太いものに交換する、もしくは無駄に長い部分を短縮する。これだけで電圧降下が減り、パワコンが正常に動ける範囲が広がります。
費用は工事内容によりますが、配線のやり直しで3万〜10万円程度が目安。10年間の売電損失と比べたら、すぐに元が取れる投資です。
BCソーラーとは
変換効率26.5%。一般的なパネルの約半分の重さ。裏面電極配置で、光の受光面積を最大化。つまり「軽くて、よく発電する」パネルです。屋根への負担が心配な方にこそ、知ってほしい選択肢です。
実例 ─ 北九州市 Sさん(3人家族・築12年)
パワコン整定値変更+配線見直しで売電量が回復
対策前の月間売電
280kWh
対策後の月間売電
345kWh
電力会社と協議してパワコンの整定値を変更、あわせて宅内配線を14sqケーブルに交換。月間65kWh(約23%)の回復に成功。※実績に基づくイメージです
3つの補助金、全部使えるかどうかは屋根の状態と設置条件で変わります。
電圧上昇の問題も含めて、お家ごとの最適な提案をいたします。補助金の「3重取り」が使えるかも、あわせて確認しませんか。
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SECTION 05
蓄電池で「売れない電気」を活かす方法
ここまでの対策は「電圧を下げて、売電できるようにする」というアプローチ。でも発想を変えると、もうひとつの道がある。売れないなら、自分で使えばいい。
蓄電池を導入すると、電圧抑制で売電できない時間帯の電気を溜めておけます。その電気を夜間や早朝に使う。売電はできなくても、電気代を減らすことで実質的に同じ経済効果が得られる。むしろ、2026年現在の売電単価(新FIT 16円/kWh)と、電気の購入単価(30〜40円/kWh)を比べたら、自家消費のほうが得するケースが増えています。
特に、電圧上昇が「対策しても完全には解消できない地域」の場合——近隣に太陽光設置宅が密集しているエリアなどは、蓄電池が根本的な解決策になる可能性があります。
補助金3重取りとは
国の補助金、県の補助金、市の補助金。この3つは、併用できるケースがほとんどです。うまく組み合わせれば、最大100万円以上の補助金になることも。「1つだけ」で申請している人が、実はかなり多いんです。
アドバイス
蓄電池の導入は初期費用がかかりますが、補助金を3重取りすれば、実質負担はかなり下がります。電圧抑制の問題を抱えている家庭こそ、蓄電池との相性がいい。売れない電気を「貯める」ほうにシフトする——これ、17年やってきて、ここ数年で急激に正解パターンになってきました。
FAQ
よくある質問
SUMMARY
まとめ|「見えない損失」を放置しないために
冒頭のTさんの話に戻ります。電圧上昇問題の怖さは「壊れていないから気づかない」というところにありました。パネルは動いている。パワコンもエラーを出していない。でも売電量は確実に減っていた——まさに「見えない損失」です。
この記事を読んだあなたは、もうその「見えない損失」を見つける方法を知っています。
この記事のポイント
- 電圧上昇抑制は、パワコンが法律(95V〜107V)を守るために売電を自動停止する正常な動作
- 原因は「近隣の電力環境」「トランスからの距離」「宅内配線の問題」の3つ
- 確認方法は、パワコンの表示・発電グラフのM字型・電圧の実測
- 対策は「電力会社への相談」「パワコン整定値の変更」「配線の見直し」の3つ
- 売電が難しい環境なら、蓄電池で自家消費に切り替えるのも有効な手段
この記事の著者より
電圧上昇問題は、「自分ではどうしようもない」と諦めている方が本当に多い。でも、電力会社に相談するだけで改善するケースは珍しくないし、蓄電池という新しい選択肢も広がっています。損をし続ける前に、まずは一歩。ご自宅の発電グラフを確認してみてください。そこから全部、始まります。
この記事を読んだあなたは、もう「知らずに損する人」ではありません。
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※本記事の情報は2026年2月時点のものです。制度・法律・売電単価等は変更される場合があります。最新情報は資源エネルギー庁および各電力会社の公式サイトでご確認ください。
現場から
設置後1年以内に「なぜか売電量が少ない」とご相談いただくケースの約2割が、この電圧上昇問題です。パネルもパワコンも正常。でもお金は確実に減っている。厄介なのは、「壊れていないから気づきにくい」ということです。