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法人で太陽光発電を導入するとき、「中小企業経営強化税制を使えば即時償却できる」と聞いたことがある方もいるかもしれません。
中小企業経営強化税制では、一定の条件を満たす中小企業者等が、認定を受けた経営力向上計画に基づいて対象設備を取得し事業に使用した場合、即時償却または税額控除を選択できる制度があります。
会社の規模・事業内容、設備の要件、発電した電気の使い方、経営力向上計画、工業会等の証明書や経済産業大臣の確認書など、複数の条件があります。
特に発電設備には、売電する電力量に関する条件があります。契約や設備発注を進める前に、「自社の設備が制度の対象になり得るか」を確認しておくことが大切です。
この記事は中小企業経営強化税制の一般的な仕組みを説明するものです。
実際の法人税・所得税の適用可否や、即時償却と税額控除の選択、補助金を受けた場合の税務処理については、税理士または所轄の税務相談窓口へ確認してください。
中小企業経営強化税制とは?
中小企業経営強化税制は、中小企業等経営強化法に基づく「経営力向上計画」の認定を受けた中小企業者等が、一定の設備投資を行った場合に利用できる税制措置です。
2026年8月現在、制度の適用期限は2027年3月31日までとされています。
| 項目 | 2026年8月現在の概要 |
|---|---|
| 制度名 | 中小企業経営強化税制 |
| 適用期限 | 2027年3月31日まで |
| 主な税制措置 | 即時償却または税額控除 |
| 税額控除率 | 原則7%。一定の中小企業者等は10% |
| 計画 | 経営力向上計画の認定が必要 |
| 設備 | 新品で、一定の設備要件・金額要件等を満たす必要あり |
税額控除には法人税額に対する上限があります。また、即時償却と税額控除を同じ資産について同時に使うことはできません。
太陽光発電も中小企業経営強化税制の対象になる?
太陽光発電設備についても、条件を満たせば中小企業経営強化税制を検討できます。
ただし、「太陽光発電設備である」という理由だけで対象になるわけではありません。
発電した電気をどれだけ売る予定か確認する
中小企業庁では、経営強化税制を利用する発電設備について、 経営力向上計画の実施期間中の発電量のうち、販売することが見込まれる電気の割合が2分の1を超える設備は対象外 と案内しています。
そのため、法人が自社工場・店舗・事業所などで発電した電気を利用する「自家消費型」の設備かどうかは、確認しておきたい項目です。
発電量と売電量の見込みについては、設備容量だけでは判断できません。会社の営業時間、休日、電力使用量、太陽光の発電シミュレーションなどをもとに確認します。
自家消費型太陽光発電の仕組みについては、 法人向け自家消費型太陽光発電の解説 も参考にしてください。
対象となる法人・設備の主な条件
制度の対象かどうかは、会社の資本金だけでは決まりません。
法人側で確認する主な項目
- 青色申告書を提出しているか
- 中小企業者等の要件を満たしているか
- 大規模法人からの出資関係などによる除外に該当しないか
- 適用除外事業者などに該当しないか
- 制度の「指定事業」に該当する事業で設備を使用するか
法人については、資本金1億円以下であっても、大規模法人との資本関係や一定期間の所得金額などによって対象外になる場合があります。
対象となる事業にも条件がある
国税庁が公表している指定事業には、製造業、建設業、農業、卸売業、小売業、倉庫業、不動産業、宿泊業、医療・福祉、各種サービス業などが含まれています。
一方、電気業は指定事業の一覧には含まれていません。
ただし、自社で太陽光発電を行うだけで直ちに「電気業」と判断されるという意味ではありません。自社が営む指定事業のために、その太陽光設備をどのように利用するのかを確認する必要があります。
設備にも金額・性能要件がある
中小企業経営強化税制の対象設備には、設備の種類ごとに最低取得価額などがあります。
| 設備区分 | 取得価額の主な基準 |
|---|---|
| 機械・装置 | 1台または1基160万円以上 |
| 工具・器具備品 | 1台または1基30万円以上 |
| 建物附属設備 | 一の取得価額60万円以上 |
| ソフトウェア | 一の取得価額70万円以上 |
実際に太陽光設備のどの部分がどの資産区分になるか、どの金額を取得価額として扱うかについては、設備内容と会計処理によって確認が必要です。
即時償却と税額控除、何が違う?
中小企業経営強化税制では、対象となる設備について、原則として「即時償却」と「税額控除」のどちらかを選びます。
| 即時償却 | 税額控除 | |
|---|---|---|
| 仕組み | 通常償却と合わせ、設備取得年度に取得価額相当額まで償却する | 一定額を法人税額から控除する |
| 主な特徴 | 減価償却の時期を初年度へ大きく前倒しできる | 法人税額そのものから一定額を差し引く |
| 控除率 | ― | 原則7%、一定の中小企業者等は10% |
| 主な制限 | 所得状況等によって実際の効果が変わる | 法人税額の20%相当額などの控除上限あり |
税額控除で控除しきれない一定の金額については、1年間の繰越制度があります。
「即時償却と税額控除のどちらが得か」は、設備価格だけでは判断できません。
今期の所得、今後の利益見通し、繰越欠損金、他の税額控除などでも変わります。税制の選択については、設備契約前から顧問税理士へ確認することをおすすめします。
太陽光設備そのものの投資回収については、 法人向け太陽光発電の投資回収シミュレーション で考え方を整理しています。
2026年現在はA・B・D・Eの4類型
中小企業経営強化税制には、現在4つの類型があります。
| 類型 | 名称 | 確認方法の概要 |
|---|---|---|
| A類型 | 生産性向上設備 | 工業会等による証明書 |
| B類型 | 収益力強化設備 | 経済産業大臣による確認 |
| D類型 | 経営資源集約化設備 | 経済産業大臣による確認 |
| E類型 | 経営規模拡大設備 | 経済産業大臣による確認 |
以前存在したC類型(デジタル化設備)は、2025年4月1日に廃止されています。
A類型
A類型では、設備メーカーを通じて工業会等へ証明書の発行を依頼します。
対象設備は、単位時間当たり生産量、歩留まり率、投入コスト削減率などの指標について、旧モデルと比べて年平均1%以上向上していることなどが求められます。
B類型
B類型では、年平均の投資利益率が7%以上となることが見込まれる投資計画について、経済産業大臣の確認を受けます。
どの類型を利用できるかは、太陽光発電という設備名だけでは決まりません。導入する設備と投資計画の内容を確認して判断します。
申請から太陽光設備取得までの流れ
中小企業経営強化税制では、設備取得と申請の順序が大切です。
- 太陽光設備の計画を整理する 設備容量、設置場所、自家消費・売電見込み、取得予定時期などを整理します。
- 利用する類型と設備要件を確認する A類型なら工業会等の証明、B類型などなら経済産業大臣の確認が必要です。
- 必要な証明書・確認書の手続きを進める 工業会等による証明書や経済産業大臣による確認書は、設備取得前に申請する必要があります。
- 経営力向上計画を作成・申請する 確認した設備を経営力向上計画へ記載し、事業分野に応じた主務大臣へ申請します。
- 認定後に設備を取得・事業に使用する 原則として、経営力向上計画の認定後に設備を取得し、認定計画に基づいて事業の用に供します。
- 確定申告で税制措置を適用する 必要な明細書や認定関係書類を添付し、即時償却または税額控除を適用します。
設備取得後に申請できる例外もありますが、最初から例外を前提に進めない方が安全です。
一定の場合、経営力向上計画の申請書到達日から遡って60日以内に取得した設備を計画へ含められる仕組みがあります。ただし、工業会等の証明書・経済産業大臣確認書については設備取得前の申請が必要で、E類型には60日ルールの例外がありません。
2027年3月31日の期限で注意すること
中小企業経営強化税制の現在の適用期限は、2027年3月31日です。
ただし、「2027年3月31日までに経営力向上計画を出せばよい」という意味ではありません。
国税庁では、指定期間内に対象設備を取得・製作・建設し、国内の指定事業の用に供した場合を対象としています。
という一連の手続きを考えると、2027年3月31日の直前から動き始めるのでは遅い可能性があります。
A類型の工業会等の証明書について、中小企業庁は発行まで「数日~2ヶ月程度」と案内しています。B類型の経済産業大臣確認も、数日~1ヶ月程度かかると案内されています。
設備発注や工事スケジュールも含め、余裕をもって確認してください。
補助金と中小企業経営強化税制は一緒に使える?
法人向け太陽光では、国・自治体などの補助制度と中小企業経営強化税制を同時に検討することがあります。
ただし、「補助金と即時償却は必ず併用できる」「国・県・市をすべて重ねられる」などとは一律に判断できません。
補助制度ごとに他制度との併用条件が定められているほか、補助金を受けた固定資産について圧縮記帳を行う場合などは、取得価額の税務上の扱いにも影響します。
補助金を利用する場合は、補助金の公募要領と税務処理の両方を確認してください。
補助対象経費、補助金額、圧縮記帳、即時償却・税額控除の計算については、税理士等への確認が必要です。
中小企業経営強化税制と太陽光発電のよくある質問
いいえ。中小企業者等の要件、指定事業、設備要件、発電した電気の販売割合、経営力向上計画、A・B・D・E類型の要件などを満たす必要があります。設備を決める前に対象可能性を確認してください。
余剰売電があるだけで直ちに対象外になるわけではありません。中小企業庁では、経営力向上計画の実施期間中の発電量のうち、販売することが見込まれる電気の割合が2分の1を超える発電設備等を対象外としています。
同じ資産について両方を重ねて適用することはできません。どちらを選ぶかは、会社の所得状況や他の税額控除などによって判断が変わるため、税理士へ確認してください。
一定の例外措置はありますが、設備取得前に申請が必要な証明書・確認書もあります。すでに契約・取得している場合は自己判断せず、経営力向上計画の窓口や税理士等へ早めに確認してください。
PPAのように第三者が設備を所有する場合、自社がその太陽光設備を取得するわけではないため、自社所有設備と同じようには扱えません。また、所有権移転外リース取引では特別償却を適用できない一方、税額控除を適用できる場合があります。契約形態ごとの税務処理を確認してください。
単純な申請期限ではありません。現在の制度では、2027年3月31日までの指定期間内に対象設備を取得等し、指定事業の用に供することなどが必要です。証明書や経営力向上計画の手続きもあるため、余裕を持って準備してください。
まとめ|太陽光の即時償却は「設備を買う前」の確認が大切
- 中小企業経営強化税制の現在の適用期限は2027年3月31日
- 太陽光発電設備だから自動的に即時償却できるわけではない
- 売電予定が発電量の2分の1を超える発電設備等は対象外
- 法人・指定事業・設備・経営力向上計画など複数の要件がある
- 2026年現在はA・B・D・E類型。C類型は廃止済み
- 即時償却と税額控除は同じ資産について選択適用
- 証明書・確認書は設備取得前の手続きが必要
- 補助金との関係は制度ごとの公募要領と税務処理を確認する
中小企業経営強化税制を検討している場合は、「太陽光を入れてから税理士に聞く」よりも、設備容量や契約内容を決める前に確認を始める方が安全です。
太陽光設備側では、発電量、自家消費量、売電予定量、設備価格、設置時期などを整理しておくと、税理士や制度窓口へ確認するときにも話が進めやすくなります。
自社の場合の太陽光設備条件を整理したい方へ
所在地、電気使用量、屋根や敷地の条件、導入予定時期などから、太陽光発電の設備容量や自家消費・売電の見込みを確認できます。税制の最終的な適用判断は、税理士や関係機関への確認が必要です。
法人向け太陽光について相談する設備契約や税制利用を前提とした相談ではありません。
