太陽光発電の電圧上昇抑制とは?売電量が減る仕組みと対処方法【2026年】

太陽光発電の電圧上昇抑制について、売電量が減る仕組みや起こりやすい場面、対処方法を図解で示したアイキャッチ画像。

情報確認日:2026年8月13日

太陽光発電のモニターやパワーコンディショナーに「電圧上昇抑制」「電圧抑制」などと表示され、晴れているのに発電量や売電量が思ったほど伸びないことがあります。

この表示が出たからといって、すぐに太陽光パネルやパワコンの故障と決まるわけではありません。

電圧上昇抑制は、系統の電圧を保つためPCSが出力を抑える制御です

太陽光発電から電力系統へ電気を送り出す「逆潮流」が増えると、周辺の系統電圧が上昇することがあります。

その際、パワーコンディショナー(PCS)が定められた制御条件に応じて発電出力を抑えることがあります。短時間の抑制だけで故障とは判断できませんが、晴れた日などに繰り返し発生し、発電量が下がっている場合は状況確認が必要です。

太陽光発電の電圧上昇抑制とは?

住宅用太陽光発電は、家庭で使い切れなかった電気を電力系統へ送り出すことがあります。これが逆潮流です。

太陽光発電から系統へ流れ込む電力が増えると、配電線の条件によっては系統電圧が上昇します。

東京電力パワーグリッドも、太陽光発電の導入拡大によって逆潮流が増えると、配電系統の電圧上昇が課題になることを公表しています。

「抑制」=パワコン故障とは限りません PCSには系統と安全に連系するための制御機能があります。ただし、抑制が頻繁な場合や発電量の低下が続く場合は、PCS・宅内配線・系統側の状況などを確認します。

95〜107Vとは何の数字?

電気事業法では、一般送配電事業者が供給する電気の電圧と周波数を、経済産業省令で定める値に維持するよう努めることが定められています。

電気事業法施行規則で定められている供給電圧は次のとおりです。

標準電圧省令で定める維持すべき値
100V101Vの上下6Vを超えない値
=95〜107V
200V202Vの上下20Vを超えない値
=182〜222V

出典:電気事業法第26条、電気事業法施行規則第38条

「107V=すべてのパワコンが止まる電圧」ではありません 95〜107Vは標準電圧100Vについて一般送配電事業者が維持すべき供給電圧の範囲です。PCSの電圧上昇抑制の整定値や制御方法は、機器の仕様や系統連系条件などに基づいて設定されます。

なぜ太陽光発電で電圧が上がる?

発電した電気を家庭から配電線へ送り出すときは、配電線や引込線、宅内配線などの電気的な抵抗・インピーダンスも影響します。

太陽光からの逆潮流

晴れた時間帯に地域内の太陽光発電から系統へ流れ込む電力が増えると、配電系統の電圧が上がる場合があります。

配電系統の状態

配電線、柱上変圧器、他の発電設備や需要など、地域の系統条件によって電圧の動きは変わります。

引込線・宅内配線

配線の長さや太さなどによって、発電時の電圧上昇に影響する場合があります。

PCSの制御条件

電圧上昇抑制や力率制御など、系統連系のために設定されているPCSの制御も関係します。

原因は住宅ごとに異なるため、「近所に太陽光が多いから」「電柱の変圧器から遠いから」と外観だけで特定することはできません。

電圧上昇抑制と出力制御は別のもの

太陽光発電では「抑制」という言葉が複数使われるため、混同しやすいところです。

現象主な意味確認先
電圧上昇抑制 配電系統の電圧上昇に対応するため、PCSが出力を抑える制御 PCSの表示・履歴、施工店、送配電事業者
再エネの出力制御 需給バランスや送電容量などの制約に対応するため、送配電事業者のルールに基づき発電出力を制御 一般送配電事業者の出力制御情報
PCSの故障・異常 機器自体の故障や保護機能の動作など メーカー、施工店、保守会社
発電量が減っただけでは原因を特定できません 電圧上昇抑制、出力制御、天候、影、PCSの容量によるピークカット、機器異常など、複数の可能性があります。

電圧上昇抑制が起きているか確認する方法

1.PCSやモニターの表示・履歴を確認

まず、パワコン本体、発電モニター、メーカーのアプリなどに「電圧上昇抑制」「電圧抑制」などの表示や履歴がないか確認します。

表示方法や確認できる履歴はメーカー・機種によって異なるため、取扱説明書も確認してください。

2.発生した日時を記録

表示が出た場合は、

  • 日付
  • 時間
  • 天候
  • PCSの表示内容
  • その時間帯の発電量

を記録しておくと、施工店や送配電事業者へ相談するときに状況を伝えやすくなります。

3.発電グラフを見る

晴天時に、同じ時間帯で繰り返し出力が急に下がる場合は、確認するきっかけになります。

グラフの形だけで電圧上昇抑制と判断しない 正午付近の発電量低下は、影、温度、PCS容量によるピークカット、出力制御などでも起こります。PCSの抑制履歴などと合わせて確認します。

頻繁に抑制されるときの確認手順

  1. 発生状況を記録する 日時、天候、PCSの表示、発電グラフなどを保存します。
  2. PCSの取扱説明書を確認する 表示の意味と、メーカーが案内している対応方法を確認します。
  3. 施工店・保守会社へ相談する PCSの異常ではないか、配線や設定を含めて確認を依頼します。
  4. 必要に応じて電圧を測定してもらう PCS側と系統連系側の電圧、宅内配線の電圧上昇などを専門業者が確認します。
  5. 系統側が疑われる場合は送配電事業者へ相談する 施工店と連携しながら、地域の系統電圧や必要な対策について確認します。
分電盤やPCSの設定を自分で変更しないでください 整定値や力率は系統連系条件に関係します。自己判断で変更せず、施工店・メーカー・一般送配電事業者の確認のもとで対応します。

「抑制」と表示されているけれど、どこを確認すればいい?

PCSの型番、発生日時、発電グラフなどが分かれば、施工店や電力会社へ相談する前に確認したい項目を整理できます。

設備状況について相談する

原因を確認する前に機器の設定変更や交換を勧めるものではありません。

系統側ではどんな対策が行われる?

地域の配電系統側に原因がある場合、どのような対策を行うかは一般送配電事業者が系統状況を確認して判断します。

東京電力パワーグリッドでは、再生可能エネルギー導入に伴う電圧上昇対策として、

  • 柱上変圧器の分割配置
  • 自動電圧調整器(SVR)の設置

などを挙げています。

ただし、住宅から相談すれば必ず変圧器を変更してもらえるという意味ではありません。測定や系統状況の確認をもとに、必要な対応が判断されます。

宅内配線が影響していないかも確認する

電圧上昇は、電力会社側の設備だけでなく、住宅側の配線条件が影響する場合もあります。

中部電力パワーグリッドでも、低圧系統連系の手続資料として「屋内配線の電圧上昇値の簡易計算書」を用意しています。

施工店に確認したい項目

  • PCSから連系点までの配線長
  • ケーブルの太さ
  • 実際の電流値
  • 発電時の電圧
  • 接続・端子の状態
  • 施工時の系統連系条件
「○V差があれば配線不良」という全国共通の自己判断はしない 必要な配線サイズや許容される電圧上昇は、設備容量・配線条件などから専門業者が確認します。

力率0.95と電圧上昇抑制の関係

住宅用太陽光の電圧上昇対策では、「力率0.95」という数字を目にすることがあります。

JPEAの公開資料では、2017年3月の系統連系規程改定により、低圧配電線へ逆潮流ありで連系する太陽光発電設備の標準力率値を0.95とすることが規定されたと説明されています。

九州電力送配電も現在、低圧PCSについて力率一定制御機能を備え、逆潮流する場合の力率を95%とすることを案内しています。

なぜ力率を変えると電圧上昇を抑えられる?

交流には、実際に仕事をする「有効電力」と、電圧の調整などに関係する「無効電力」があります。

JPEAでは、力率一定制御によって一定割合の無効電力を系統へ流すことで、電圧上昇を抑える方向に作用すると説明しています。

力率0.95と「電圧上限の整定値」は別の設定です 力率と電圧上昇抑制の整定値を同じものとして考えないでください。実際の設定はPCSの仕様や系統連系条件を確認します。

力率0.95で発電量は減る?

影響はPCSと太陽電池容量の組み合わせによって異なります。

JPEAの資料では、力率0.95による年間発電量への影響を数%程度とする例が示される一方、電圧上昇による抑制機会が減り、結果として年間発電量が増える場合もあると説明されています。

そのため、「力率0.95なら必ず年間○%損する」とは計算しません。

蓄電池を付ければ電圧上昇問題は解決する?

蓄電池は、系統電圧そのものを修理する設備ではありません。

一方、太陽光の余剰電力を家庭側の蓄電池へ充電できるシステムでは、系統へ送り出す電力量を減らし、発電した電気を自宅で使う選択肢を増やせます。

ただし、

  • 現在の太陽光・PCSとの互換性
  • 蓄電容量
  • 充放電出力
  • 運転制御
  • 導入費用
  • 実際に増やせる自家消費量

などを確認する必要があります。

電圧上昇抑制が出ているから蓄電池を買う、という順番にはしない まず原因を確認し、系統側・配線側・PCS設定などに問題がないかを整理します。そのうえで自家消費を増やしたい場合に、蓄電池を別の選択肢として検討します。

新築・これから太陽光を設置する場合に確認したいこと

これから太陽光を設置する場合は、施工店が系統連系の申込みと技術確認を行います。

九州電力送配電でも、低圧の太陽光発電設備を系統へ連系する場合、申込み後に技術検討・設計を行う手続が設けられています。

  • PCSの仕様・認証
  • 系統保護装置の整定値
  • 力率設定
  • 配線の長さ・太さ
  • 系統への逆潮流条件

などを、設計・系統連系の段階で確認します。

設計を工夫すれば絶対に電圧上昇抑制が起きない、というものではありません 住宅側を適切に設計しても、将来の地域の系統状況などによって電圧条件が変化する可能性があります。

太陽光発電の電圧上昇抑制についてよくある質問

電圧上昇抑制と表示されたらパワコンの故障ですか?

表示されたことだけで故障とは判断できません。PCSが系統電圧に応じて制御している場合があります。ただし頻繁に表示される、発電量が大きく低下している、他のエラーも出ている場合は施工店やメーカーへ確認してください。

107Vを超えたら必ず売電が止まるのですか?

107Vは、標準電圧100Vについて一般送配電事業者が維持すべき供給電圧の上限側の値です。すべてのPCSが107Vを一律の停止値としているという意味ではありません。PCSの制御条件は機種や系統連系条件を確認してください。

電圧上昇抑制と出力制御は同じですか?

別のものです。電圧上昇抑制は配電系統の電圧維持に関係する制御です。再エネの出力制御は、需給バランスや送電容量などの制約に対応するために行われます。

晴れているのに発電グラフがへこんでいます。電圧抑制ですか?

グラフだけでは判断できません。影、温度、PCSの容量によるピークカット、出力制御、機器異常などでも発電量は低下します。PCSの表示・履歴と合わせて確認します。

PCSの電圧設定を自分で変更してもいいですか?

自己判断で変更しないでください。PCSの整定値や力率は系統連系条件に関係します。施工店、メーカー、一般送配電事業者へ確認したうえで対応します。

力率0.95とは何ですか?

低圧配電線へ逆潮流ありで連系する太陽光発電では、系統電圧上昇を抑えるため標準力率0.95の一定制御が用いられています。電圧上昇抑制の整定値とは別の設定です。

力率0.95にすると発電量が5%減りますか?

年間発電量が一律5%減るという意味ではありません。PCS容量と太陽電池容量などによって影響は変わります。JPEAでは年間数%程度となる例を示す一方、電圧上昇抑制が減ることで年間発電量が増える場合もあると説明しています。

誰に最初に相談すればいいですか?

PCSの抑制表示や発電量低下がある場合は、まず設置・施工店や保守会社へ機器・配線・設定の確認を相談すると整理しやすくなります。系統側の確認が必要な場合は一般送配電事業者へ相談します。

蓄電池を付ければ抑制はなくなりますか?

必ずなくなるとは限りません。蓄電池は系統電圧そのものを直す設備ではありません。ただし、対応システムでは太陽光の余剰電力を蓄電して自宅で利用する方法があります。

まとめ|抑制表示が続くなら、まず原因を切り分ける

  • 電圧上昇抑制はPCSの故障とは限らない
  • 太陽光からの逆潮流によって配電系統の電圧が上昇する場合がある
  • 95〜107Vは標準電圧100Vについて維持すべき供給電圧の範囲
  • 107VがすべてのPCS共通の停止値という意味ではない
  • 電圧上昇抑制と再エネの出力制御は別の仕組み
  • 発電グラフだけでは原因を特定できない
  • 発生日時・PCS表示・発電量を記録する
  • 施工店にPCS・配線・設定を確認してもらう
  • 系統側が疑われる場合は一般送配電事業者へ相談する
  • 力率0.95と電圧抑制の整定値は別の設定
  • 蓄電池は系統電圧を直す設備ではない

電圧上昇抑制が一時的に表示されたからといって、すぐに設備交換が必要になるわけではありません。

一方、晴れた日に繰り返し抑制が発生している場合は、記録を残したうえで設備側と系統側を順番に確認すると原因を整理しやすくなります。

自宅の発電量やPCS表示が気になる場合は

PCSの型番、表示内容、発電グラフ、設置時期などによって確認する内容は変わります。何を施工店や電力会社へ確認すればよいか整理できます。

自宅の設備状況を確認する

設備の交換や蓄電池の導入を前提とした相談ではありません。

公的機関・関係機関の確認先

本記事は2026年8月13日時点で確認できる法令、一般送配電事業者、資源エネルギー庁、太陽光発電協会(JPEA)などの公開情報をもとに整理しています。PCSの整定値や対応方法は設備・系統条件によって異なるため、実際の対応時には施工店・メーカー・一般送配電事業者へご確認ください。